新種のナマケモノ

 誰のためでもない文章を書くことの素晴らしさについて話してみよう。きっとそれは、自分の書きたい話で文章の幕を開くことができるのだ。目の前にはキーボードがある。しかし、まるでジャズを詠んでいるような気分に浸る。常に自分の望むメロディが続いていくわけではない。たまにはあるいはほとんどが、そうでないメロディであろう。しかし、そのような今とああかもしれない未来を、大らかにまたは丁寧に紡いでいくことで「生きている」ことを実感する。いい文章を書くから楽しいわけではない。生きていることが感じ取れるから楽しいのだ。

 

 今日が暮れてゆくうちに「今日の愛おしかった瞬間」に話してみよう。最近ハマっているアニメがあって(Steven Universe←n度見)、読書や勉強は未来の自分に任せて好きなアニメや映画ばかり観ている放課後を送っている。「あーそろそろ読まないとー」と内心焦ったが、体が言うことを全く聞いてくれなかった。いや、聞こうともしなかっただろう。とにかく、そのような日々を続けて当然ながら自分の研究アカウント(趣味垢)のフォロー数も増えたわけだが、ふとBRUTUSの映画記事のスートリーを投稿するとき、「私ってこんなに好きなものが多かったんだ」と気づいた。え、こんなに多いんだ、と!「趣味はなんですか?」と聞かれるたびに困難さを隠せなかった自分だが、いつの間にかこんなに好きなものが増えていたなんて。すごく嬉しかった。

 

 次の愛おしかった瞬間は、最近の生活について。先月から2ヶ月程度のダイエットをすることにした。「ダイエット」と言うと、痩せるために絶食するとか限界まで食欲を否定する試みとすぐ誤解されやすいが、私の場合は「ちゃんとした食事を決めた時間に摂る」ことを意味する。体重減少は体の栄養バランスを整えると、自然についてくるものでしょう。ということで、朝ごはん・昼ごはん・夜ごはんを決めた時間内に規則正しく食べている。献立にもある程度の縛りはある。たとえば、揚げ物はできる限り避けること、ファストフードより手作りの料理を食べるよう頑張ること…。お昼ごはんをいっぱい食べて、間食や夜食は控えること。今までの食生活が荒かったので、大変な時も当然ながらやってくる。お菓子が食べたいとか刺激的なものが食べたいとか。しかし、一生食べないわけでもないので、この期間内だけ控えておけばいいと、落ち着いた心構えで日々の衝動に向き合っている。

 

 何より素敵なところは、料理する時間が増えたのだ。その日の気分で自分の好きな食材を組み合わせて、オリジナルレシピで食べたいものを作る。それをお腹がいっぱいになるまで食べる。これがとても幸せなのだ。もちろん大変な瞬間も何度もそして頻繁に訪れる。しかし、不器用ながらも卵焼きを作る楽しさ、好きな食材で飾った食卓をも忘れたくない。刺激的な食べ物は確かに美味しくて魅力的だ。しかし、この2ヶ月は素朴にそして充実に過ごしていきたい。何より不眠が解決できたし。寝つけが悪くて心配だったが、最近はそれもなくなった。ぐっすり眠れていい。

 

 書いてみてわかったのだが、「愛おしい」には至って多様な感情が含まれている。単に楽しい・幸せ・嬉しいから、「愛おしい」のではない。ときには我慢・わからなさ・不安も紛れもなく存在する。良し悪しがあってからこそ、不可抗力的に愛おしく思うのかもしれない。この複雑さに思い切り身を委ねることも悪くない選択肢だ。

 

 気の向くまま生きる大胆さ、理解できないことへの優しさ、社会のリズムに耳を傾ける寛容さ…大切で愛おしい生活を守るために全て不可欠なものだ。