シトシトした秋の香り

何が楽しかったか、何が嬉しかったかわからないけれど、漠然と悦びに満ちた日ってあるよね。今日がそのような日だった。

 

秋の訪れを教えてくれる雨の日。穏やかに降ってくる雨を眺め、もう秋がここに渡来してくるんだーと実感した。今日を境目に気温もグッと下がるらしいし。基本的に晴れの日が好きな人だが、久しぶりの雨がそこまで憎らしくはなかった。そうか。雨はこの星のお便りを伝えてくれる鈴みたいなものだったね。猫のいっぱいある傘をもって家を出た。

 

余談だが、今はあるまちにあるスタバで日記をつけている。ホットティーカモミールを頼んだわけだが、あまりにも温かく一口ももらってない。猫舌すぎる。

 

金曜はその週の疲れが波のように押し寄せてくる日である。今日だけなんとか過ごせば!と思いつつも、溜まってきた疲れがそれを許してくれない時もある。したいことはたくさんあった。そして、やらねばならないこともたくさんあった。しかし、幸いなことに私にはそれが調整できる口がある。

 

自分の時間軸に耳を澄ませて、仕事よりはふとやりたくなったことを衝動的に試みる。最初は怖さの方が勝る。行ったことのないところより、行ったことのある場所に行きたくなる。

 

研究会の真っ最中、どうしても映画が観たくなった。友達とある日レイトショーで観た映画がとてもよかったのがきっかけだろうか。映画じたいも素晴らしかったが、ただ友達とレイトショー映画を観たということがとても楽しかった。高校時代を思い出す。学校で遅い時間まで勉強しないといけなかったので、友達と遊ぶ機会が学校内でしかなかった。溜まったストレスを発散するために、たまに友達と近所の映画館でレイトショー映画を観た。その日観た映画は、『ミス・ペレグリンと奇妙なこどもたち』。タイトル通り本当に奇妙な映画だった。観た後の外は真っ暗。人も少なくまちがとても鎮んでいた。まるでまちの主人となったよう、その夜道を友達と歩き回った。

 

大人のためのカラオケ、売春、お酒、酔っ払い、ホームレス、バイト帰りの若者、終電を狙っている会社員、暗くなった百貨店、不良たちがよく力比べをするゲームセンター、それに媚びる女たち…。その中にいる制服を着た女。ノスタルジアと名づけるには汚く、一方では人間らしい思い出だ。

 

シトシトした雨の持ってきた香りには、どのような物語があるだろうか。すべてを抱え込むことはできないかもしれないけど、せめてそれと向き合える人になったら嬉しいかも。